遺産分割調停はどのように終わるか教えてと質問されることがあります。

そこで、このような疑問を持たれた方のために、遺産分割調停の終わり方の記事を書きました。

まず、遺産分割合意がまとまり、全相続人あるいは、相続人全員の代理人弁護士が出席して、遺産分割調停が成立した場合は、これで、調停が終了します。

このように調停を成立させる場合、1人の弁護士が複数の相続人を代理している時は、代理している相続人間で利益相反が生じるため、あらかじめ、家裁(東京家庭裁判所を念頭においています)に置いてある双方代理の申述書に代理する相続人の署名・捺印をもらい提出する必要があります。

遺産分割合意が事実上まとめっているのに相続人の中で、調停に出席せず、弁護士にも委任しない方がいる場合があります。

例えば、その相続人が外国や地方にいる場合や、高齢である、その相続人の相続分が僅少である、又は感情的対立があるなどの場合があります。

このような場合、調停条項案の書面による受諾(不出頭の当事者による調停条項案に対する受諾書面等により相続人間における合意が成立したと擬制する制度)(家事事件手続法270条1項)という制度もありますが、むしろ、現在は、裁判所による調停に代わる審判(家事事件手続法284条1項)が使用される場合がほとんどです。

調停に代わる審判とは、調停成立に至らない場合に、裁判所が事件の解決のためにする審判です。

異議がある相続人が二週間以内に異議申立てをするとこの審判は失効し、正式審判に移行しますが、異議申立てがない場合は調停と同様の効力を生ずるものです。

異議が出されると、正式審判に移行してしまうため、裁判所は、出席相続人の合意した調停条項案を記載した中間調書を欠席相続人に送り、同意あるいは異議を出さないことを確認の上、この調停に代わる審判を行います。

以上が、調停が成立あるいは、それに準ずる状態で、遺産分割調停が終了する場合です。

次に、前提である法律関係に争いがないか合意ができており、相続財産の範囲及び評価について合意ができているか、評価について鑑定が終了している場合で、特別受益、寄与分等の主張がないか、既に主張・立証が十分提出されている場合は、審判に移行し、裁判所が判断を行うことになります。

しかし、このような状態でないとき、特に前提である法律関係(相続人・相続財産の範囲遺言の有効性等)に争いがあり、訴訟で確定する必要がある場合は、審判に移行できないことから、裁判所は、調停の申立人・申立人の代理人に調停を取り下げることを勧告します。

しかし、このような場合に申立人等が取り下げを拒む場合については、裁判所は、「調停をしない措置」(「なさず」とも言います。)(家事審判手続法271条「調停委員会は、事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、家事調停事件を終了させることができる。」)を行います。

この「調停をしない措置」の場合は、調停成立も、審判に移行することもなく調停が終了することになります。