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先日、私たち夫婦と同居していた母が80歳で亡くなりました。母の相続人は、姉である私と弟の二人です。
父は、10年ほど前に亡くなりました。母は、母の父から相続した土地・建物等の不動産、現預金、株式等の有価証券を持っていました。
遺産は、法定相続分どおり、半分ずつで分けたいと考えています。
ただ、弟は、50代になっても、定職につかず、昔から、ルーズな性格です。
弟の性格を考えると、遺産分割の合意をしても、手続が必要なごとに、いろいろな要求をしてきそうで不安です。
どうしたらよいでしょうか。 -
遺産分割の合意をしても、それだけで、遺産が自動的に相続人の名義になるわけではありません。
特に、①土地・建物等の不動産、②預金、③株式等の金融財産については、相続人全員で、名義変更等の手続を行わなければなりません。
そのため、遺産分割の合意が成立し、合意書等が作成されても、これらの手続が完了しない限り、また、トラブルが生じる可能性があります。
そこで、以下においては、まず、①~③について、どのような手続が必要かを説明した後、どのようにトラブルを防止するかと、トラブルが生じた場合どうするかについて、説明します。相続財産である土地・建物などの不動産を相続するために必要な手続・書類
相続財産である土地・建物については、相続するためには、相続による所有権移転登記等の登記を行う必要があります。
そのためには
ア 相続人を特定する全部事項証明書(戸籍謄本)・改製原戸籍謄本・除籍謄本
※ 被相続人(本件の場合はお母様)の出生から、相続人(本件の場合は相談者と弟)の現在の戸籍謄本まで連続するように全部取得することになります。
イ 遺言書又は相続人全員による遺産分割合意書
ウ 司法書士に依頼する場合は相続人全員分の登記の委任状(署名の上、実印で捺印し印鑑証明書を添付したもの)、自分で行う場合は相続人全員の署名・捺印がされ実印で捺印し印鑑証明書が添付された登記申請書
が必要です。預金の相続のために必要な手続・書類
銀行等の金融機関の預金については、故人の口座を解約し、相続される相続人の口座に振り込むか、現金で引き出すことになります。そのためには、
ア 前記不動産のアと同じ、相続人を特定する全部事項証明書(戸籍謄本)・改製原戸籍謄本・除籍謄本
イ 口座のある金融機関の所定の相続届等の書類に適宜、相続人全員が署名・捺印(実印)の上、印鑑証明書を添付したもの等。
が必要です。株、投資信託、国債などの有価証券の相続のために必要な書類
故人の口座のある証券会社等に相続される相続人の口座があれば、その口座に書き換える等できますが、口座がない場合は新口座を開設するなどすることになります。そのためには、
ア 前記不動産のアと同じ、相続人を特定する全部事項証明書(戸籍謄本)・改製原戸籍謄本・除籍謄本
イ 各証券会社所定の所定の相続届、名義書換、新口座開設等の書類に適宜、相続人全員が署名・捺印(実印)の上、印鑑証明書を添付したもの等
が必要です。トラブル防止
いずれにも共通するのが、ア 相続人を特定する全部事項証明書(戸籍謄本)・改製原戸籍謄本・除籍謄本です。複数の資産がある場合はそれぞれに必要になります。
これらの戸籍の資料が少ない場合は、取得する際、必要な枚数を取得するようにするとよいでしょう。
他方、これらの戸籍の資料が大量にある場合は、
①登記所、銀行等の金融機関、証券会社等に提出するごとに、原本還付(原本を返還してもらうこと)をお願いして提出する方法や、
②戸籍等の資料を一式取得した段階で、法定相続情報証明制度を使用し、登記所(法務局)に戸除籍謄本等一式を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ、登記官がその一覧図に認証文を付した写し必要枚数の法定相続情報一覧図の写しを取得して、これを登記所、銀行、証券会社等に提出する方法があります。
ただし、この場合でも、各相続人の最新の戸籍謄本は、一緒に提出しなくてはなりません。遺産分割合意書等を作成しても、作成後、相手方の相続人が前記の登記所、銀行等の金融機関、証券会社等に提出する書面の作成(署名・捺印・印鑑証明書)・提出に協力してくれなければ、それらの相続手続はできません。
むろん、最悪、裁判等を行うことで、相続手続を行うこともできますが、結局、交渉によって、新たな対価の提供を求められることにもなりかねません。
そこで、一番よい方法は、単純ですが、遺産分割合意書等を作成する際に、自分が相続する財産についての前記イの書類、例えば、預金であれば口座のある金融機関の所定の相続届等の書類等にも、署名・捺印をもらい、必要な枚数の印鑑証明書を取得することです。
そのためには、合意がまとまる前から、相続財産のある金融機関や証券会社の必要書類を確認し、取得しておくことが必要です。また、不動産がある場合は、合意がまとまりそうになったら、司法書士に相談する等して、委任状等を作成していただくとよいでしょう。
遺産分割の合意が成立しても、前記のような手続が完了しない限り、遺産分割は終了しません。
実は、相続を得意にする弁護士は、合意内容、合意書面の内容、とともに、前記のような相続財産(不動産、預金、株式等の有価証券等)の相続手続の段取りにも非常に神経を使っています。
遺産分割の合意と手続きの際のトラブル防止
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