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一人暮らしだった父が今年、亡くなりました。
母は5年前に亡くなっています。
父の相続人は、兄である私と弟の二人です。
父の相続財産は、土地等の資産の外、銀行からの借入金が3000万円です。
このような場合は、遺産分割についてはどのようなことを注意しなければならないでしょうか。 -
借入金などの金銭債務の相続は、相続人だけの意思では誰が相続するかを決められず、金銭債務の帰属は、債権者である銀行などの承諾の上で決めなくてはなりません。
このため、話し合いで遺産分割を行う場合も、節目節目で、銀行等の意向、手続を確認して行わなければなりません。
例えば、本件である相談者と弟のどちらか一人が資産を全部相続する代わりに金銭債務の全額を負担し、他の相続人は債務の負担を免れようとしたとしましょう。
銀行等の債権者が債務を相続するという人が債務の弁済を行うには資力が不十分と判断すれば認めませんし、そのような場合は、認めるための条件として、連帯保証人、担保等の追加を求められることもあります。問題は、話し合いがまとまらず、調停・審判となった場合です。
法律的には、相続開始前からある金銭債務は、相続により、当然に各相続人に法定相続分で承継されると考えられるため、遺産分割の対象とはならないと考えられています。このため、当然には、遺産分割の調停で話し合うことができません。
ただ、調停の場合は、金銭債務についても分割の対象にすることについて、相続人全員の合意があれば話し合うことはできます。
この場合も、調停成立前に、銀行等の債権者に相続人が合意すると考えられる調停の内容で承諾できるかどうか、確認の必要があります。さらに、調停がまとまらず、裁判所が強制的に判断する審判になった場合は、仮に相続人の全員が審判で債務の負担について判断することを望んでいても、債務の相続について審判の対象とすることはできません。
当事者でない銀行等の債権者の利益を、その意向を無視して判断することは、裁判所にもできないからです。
このため、このような場合に審判を行うと、プラスの相続財産のみ、法定相続分で分割され、金銭債務については、判断されず、前記のように法律上、法定相続分で各相続人に承継されることになってしまいます。実務上、金銭債務の相続で、よく問題になるのは、被相続人が非上場の会社を経営している場合で、被相続人の事業を承継する相続人が債務を負担する代わりに主要なプラスの相続財産の取得を希望するのに対し、他の相続人が債務を分担することは拒むがプラスの相続財産については法定相続分を相続することを希望する場合です。
このような場合については、前記のことを、頭に入れて、慎重に対応する必要があります。
金銭債務の相続を行うためには
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