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父が亡くなりました。
父の相続人は、長男A、長女B、次男の私Cです。
父の遺産は、8000万円でした。父は、遺言書で、「長男Aに5000万円、長女Bに3000万円を相続させる。」旨を残していました。
この遺言書によると、私Cの相続分はありませんでした。この場合、私の遺留分はいくら侵害されているのでしょうか。
また、私はA及びBに対し、それぞれいくらの金額を請求できるのでしょうか。 -
本件の場合、相談者Cの遺留分は侵害されており、その金額は、1000万円です。
相談者Cは、この1000万円について、長男Aに対し625万円、長女Bに対し375万円を遺留分侵害額請求権(改正前民法が適用される場合は遺留分減殺請求権)に基づいて請求することができます。
本件の各相続人の個別遺留分は、全員共通で
8000万円(遺留分算定の基礎となる財産)×1/4(法定相続分)×1/2(総体的遺留分)
=8000万円×1/8=1000万円
で、1000万円となります。そこで、相談者Cに対する遺留分侵害額は、個別遺留分の1000万円から、相続する金額を除いた金額となりますが、今回は、相続するのは0円ですので、侵害額は1000万円となります。
本件の遺言書は、「相続させる。」と規定している点で、遺贈ではなく、特定財産承継遺言と呼ばれるものですが、遺留分については、遺贈と同様に扱われます(民法1047条1項)。
長男A、長女Bは、相続人です。相続人が受遺者等の場合、遺言書に基づいて受け取った目的物の価格からみずからの個別遺留分を控除した額を限度として、Cの遺留分侵害額について、責任を負います(民法1047条1項柱書の3つめの括弧書き)。そこで、長男A、長女Bが遺言書に基づいて相続した分から個別遺留分を控除した金額を計算すると、
長男A 5000万円-1000万円=4000万円
長女B 3000万円-1000万円=2000万円
となります。複数の遺贈等がある場合は、遺留分を超過する金額(上記金額)の割合で各受遺者等は、遺留分侵害額を負担することになります(民法1047条1項2号)。
そこで、A、Bはそれぞれの個別遺留分を超過する上記金額の割合で負担することになるので、その負担を計算すると下記のようになります。
長男A 1000万円×5000万円/(5000万円+3000万円)
=625万円
長女B 1000万円×3000万円/(5000万円+3000万円)
=375万円
となります。したがって、相談者Cは、遺留分侵害額1000万円について、長男Aに対し625万円、長女Bに対し375万円を請求することができます。
この例は、遺贈等を受領した複数の相続人がいる場合としては、必ずしも複雑な例ではないのですが、このように遺留分侵害額等の計算は、複雑なので、実際に請求する際には、弁護士に相談することをおすすめします。
遺留分侵害額の計算(遺贈等を受けた複数の相続人がいる場合)
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