ここでは、東京家庭裁判所への遺産分割調停の申立ての必要書類・提出方法等をご説明します

申立先

調停の管轄(担当する裁判所)は、原則として、相手方の住所地(相手方が複数いる場合は、その内の1人の住所地を管轄する裁判所でもその裁判所への申立てが可能です。)を管轄する家庭裁判所となります。ただし、相手方との間でどこの家庭裁判所で行うかについて合意ができている場合(申立ての際に管轄合意書を提出することが必要)は、その合意した裁判所に申立てることができます。

東京の場合は、23区内、三宅村、御蔵島村、小笠原村に相手方の住所地がある場合は、東京家庭裁判所(本庁:霞ヶ関)になります。

八丈島、青ヶ島村に相手方の住所地がある場合は、東京家庭裁判所八丈島出張所になります。

大島町、利島村、新島村、神津島村に相手方の住所地がある場合は、東京家庭裁判所伊豆大島出張所になります。

上記以外の多摩地区に相手方の住所地がある場合は、東京家庭裁判所立川支部になります。

申立てに必要な費用

収入印紙が、被相続人1人につき、1200円連絡用郵便切手が、3590円(82円×10枚、50円×40枚、20円×10枚、10円×20枚、5円×10枚、2円×10枚)_相手方10人まで。以後10人ごとに同様の1セットが追加して必要になります。

※ 令和7年1月6日時点、今後、郵便料金の値上げ等の影響により、値段が上がる可能性があります。

提出が必要な書類

1 申立書

被相続人が複数の場合は、それぞれについて作成する必要があります。また、本申立書は、相手方に送付されます。そのため、裁判所用、相手方全員分、申立人控え(提出せず、申立人がもっておく。)を準備する必要があります。
申立書には、当事者目録、遺産目録が付いています。
この申立書は、相手方に送付されます。

※ 1~4の定型書式については、裁判所のサイトの内、東京家庭裁判所のページで、WORD版、pdf版をダウンロードできます((「東京家庭裁判所」、「家事調停の申立て」等のキーワードで裁判所のページを検索していただき、同頁の「相続に関する調停の申立書」のところにひな形・説明があります。)。

2 事情説明書

申立人(複数いる場合)・被相続人ごとに1通必要です。
本人が定型書式に記載した事情説明書は、相手方に送付されませんが、後日、相手方の閲覧・コピーが許可されることがあります。

3 連絡先等の届出書

申立人(複数いる場合)・被相続人ごとに1通必要です。
相手方に送付されません。

4 進行に関する照会回答書

申立人(複数いる場合)・被相続人ごとに1通必要です。
相手方に送付されません。

5 戸籍謄本・除籍謄本など

 
下記のような戸籍などを1通ずつ(同じものを重複して提出する必要はありません。)。これらは、相手方には送付されません。

(1) 必ず提出しなければならない戸籍謄本等
ア 被相続人の出生時から死亡時までの連続した全戸籍謄本など
イ 相続人全員の現在の戸籍謄本

(2) 相続人の中に被相続人の兄弟姉妹が含まれる場合
ウ 被相続人の父母の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本等
エ 父方及び母方の両方の祖父母の死亡が記載されている戸籍謄本
(3) 相続人の中に被相続人の子又は兄弟姉妹の代襲相続人がいる場合
・ 代襲相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本等

※ 代襲相続人とは、代襲相続をする人のことです。代襲相続人になれるのは、被相続人の直系の卑属(兄弟姉妹の場合は、被相続人からみて甥・姪まで)に限られています。)

戸籍の代わりに、法定相続情報の提出によって変えることも可能ですが、その場合でも、戸籍謄本等の提出を裁判所より求められることがあります。特に兄弟姉妹の相続人がいる場合で、その中に代襲相続人がいる場合は、その部分の戸籍の提出を求められる場合が多いです。

本人が遺産分割調停を申し立てる場合、本人の直系(被相続人→本人→子・孫等)の戸籍などは取得できます。しかし、兄弟・姉妹などの横の関係の戸籍等は取得できず、弁護士・司法書士等に依頼する必要があります

この場合も、まず、本人が戸籍謄本(戸籍証明書)、除籍謄本(除籍証明書)の広域交付の制度を利用し、直系の戸籍謄本等を取得していただき、弁護士などの専門家にお渡しいただくほうが迅速に、戸籍謄本等を取得することができます(「相続のための戸籍謄本・除籍謄本の取得が令和6年3月1日から、いままでより便利になりました。」を参照してください)。

6 住民票又は戸籍附票

相続人全員の住民票又は戸籍附票と、被相続人の除票が必要です。
これらは、相手方に送付されません。

7 遺産である全不動産についての不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書(最新年度のもの)

遺産に不動産がある場合、全不動産について、これらの書類が各1通必要になります。

これらの書類は相手方に送付されません。

8 遺言書、遺産分割協議書が作成されている場合

遺言書、遺産分割協議書のコピーを提出する必要があります。

※ これ以降の8~10の資料は、相手方に送付されます。そのため、裁判所用、相手方全員分、申立人控え(提出せず、申立人がもっておく。)を準備する必要があります。

提出する際は、各書類最初のページの右上に赤字で、甲第●号証とナンバリングをして下さい。また、提出する書類の内容を記載した資料説明書を作成し、これを添付して、裁判所に提出して下さい((「東京家庭裁判所」、「家事調停の申立て」等のキーワードで裁判所のページを検索していただき、同頁の「相続に関する調停の申立書」のところにひな形・説明があります。)。

9 遺産の評価についての提出書類

提出の仕方等については、「8」の「※」を見てください。

共通して、遺産分割時点の評価の資料が必要です。特別受益、寄与分が問題となる場合は、さらに、相続開始時の評価の資料も必要になります。

(1) 遺産に不動産がある場合
路線価(土地)、固定資産税の資料。また、不動産業者の査定書などの資料。

(2) 遺産に預貯金がある場合
預貯金の通帳・証書・残高証明書・取引履歴の写しなどの資料。

(3) 遺産に株式やその他の有価証券、投資信託、仮想通貨などがある場合。

上場株式については、当該日の新聞の株式欄の価格のコピーなど。未公開株式は、相続税申告書など。その他の有価証券、投資信託、仮想通貨などについては、取引口座の残高証明書及び直近の銀行、証券会社からの取引報告書などの資料。

10 その他の資料

提出の仕方等については、「8」の「※」を見てください。

この項目の資料は、必ず提出しなければならないものではないが、提出することにより、調停において、裁判官・調停委員に対し相手方の遺産分割案より当方の案の方がより妥当なものであることを示し、それにより、相手方との交渉において有利なポジションを取得するために提出するものです。

【不動産関係】
・ 遺産である不動産についての不動産登記事項証明書(共同担保目録付)及び固定資産評価証明書(最新年度のもの)。これらは、前記「7」において、原本を裁判所に提出しますが、相手方に送付はされないため、相手方に示して、交渉を行うためには、甲号証として、提出する必要があります。
・ 公図
・ 住宅地図・ブルーマップ
・ 最寄りの駅がどこかわかるような地図
・ グーグルマップ ストリートビュー・航空写真モード
・ 土地・建物の写真
・ 借地権付建物の場合 土地賃貸借契約書のコピー

【株式関係】
前記「9」以外のものとしては、
・ 配当金などの支払通知書など。
・ 公認会計士などによる査定書

11 非開示の希望に関する申出書

裁判所には提出する必要があるが、相手方には非開示を希望する情報がある場合は、非開示を希望する情報が記載された書面(この書面以外には、非開示を希望する情報を記載しないでください。また、非開示の情報部分についてはマーカーで線を引くなどしてわかるようにして下さい。)、本申出書にホチキス止めなどして一体化して、提出して下さい。

主張書面

遺産の範囲や評価、遺産の分割方法などに関する具体的な意見や希望などの主張を調停に提出する場合は、「主張書面●」などの表示をつけて、提出します。●の部分には、「1」、「2」等、書面の提出順に記載することになります((「東京家庭裁判所」、「家事調停の申立て」等のキーワードで裁判所のページを検索していただき、同頁の「相続に関する調停の申立書」のところに主張書面等のひな形・説明があります。)。

書面による証拠(書証)の提出

領収書、写真、陳述書(当事者や関係者の言い分などをまとめたものに、本人が署名押印をした書面)などについては、前記「8」~「10」の資料と同様、裁判所用、相手方全員分、申立人控え(提出せず、申立人がもっておく。)を準備する必要があります。

提出する際は、各書類最初のページの右上に赤字で、甲第●号証とナンバリングをして下さい。また、提出する書類の内容を記載した資料説明書を作成し、これを添付して、裁判所に提出して下さい((「東京家庭裁判所」、「家事調停の申立て」等のキーワードで裁判所のページを検索していただき、同頁の「相続に関する調停の申立書」のところに資料説明書等のひな形・説明があります。)。

申出書やその他の書類は、調停で自分の主張(遺産分割の方法等)を裁判所に適法で合理的なものと理解してもらい、調停という交渉の場で、有利なポジションを得るために使われるものです。

どのような書類を提出したらよいか。この書類を提出してよいのかなど疑問がある場合は、遺産分割に強い弁護士にご相談下さい。