新型コロナウイルスに対する東京家庭裁判所(以下「裁判所」といいます。)の遺産分割調停(以下「調停」)といいます。)の運営について解説いたします。
ただし、この記事の内容は、令和2年6月29日現在を前提として私が調べたものですし、今後、様々な変更が加えられると思います。
目安と考えていただき、実際に調停を申立てられる場合は、裁判所に具体的手順等ご確認下さい。
令和2年4月7日に新型コロナウイルスについて緊急事態宣言がだされたことから、結局、裁判所は、同4月7日から同年6月5日(金)までの調停の期日を職権で取り消しました。
その後、6月8日(月)より、従前、継続していた調停のうち、6月5日以降に期日が決められていた調停についてはそのまま再開しました。
また、期日が取り消された調停については、両当事者・代理人間を調整し、再度期日を指定しようとしていますが、今の時点では、まだ、全部の調停について、期日が指定されている状態ではありません。
また、この間に新たに申し立てられた調停の期日の指定については、なかなかできていないのが現状のようです。
そのため、(これは、私の推測ですが)今後、新たに調停を申し立てる場合は、第1回の調停期日が来年になることも想定しなければならないと思われます。
さて、具体的な調停の運営ですが、従前の調停では、調停を行う部屋(調停室)と同じ階に、申立人の待合室と相手方の待合室があり、ここで、当事者及び代理人が、調停委員が呼びに来るのを待つことになっていました。
しかし、この待合室が当事者・代理人の数に比較して小さいため、このままだと、いわゆる「三密(さんみつ)」になってしまいます。
そこで、18階、19階等の今まで使わなかった部屋や、あいている調停室を待合室で使用することになりました。
このため、調停を行う調停室と待合室のある階が異なる場合が発生しますので、調停に出頭される当事者の方は、両方の部屋の階数を確実に覚えることが必要です。
また、調停に出頭される方には、マスクの着用が義務づけられました。
さらに、自分用の筆記用具も持参された方がよいと思います。当然、調停委員、裁判所職員、裁判官もマスクを着用することになりました。
出席された当事者・代理人については、
・37.5度以上の熱がないかどうか
・風邪のような症状がないか
・体がだるいなどの症状がないか
・臭覚・味覚等に異常はないか
・感染者・濃厚接触者との接触がないか
等がチェックされることになります。当日に上記の症状等が出た方も、裁判所に連絡の上、遠慮なく、欠席した方がよいと思います。
調停室についても、13㎡以下の狭い調停室は使用しないことになりました。
これにより、15%の部屋が使えなくなりました。
このこともあり、調停の時間及び時間帯も変更になりました。
従前は、基本2時間で、延長可能が原則でしたが、これからは、1時間45分で延長は不可ということになりました。
また、30分異常の連続使用は禁止され、30分使用したら10分程度の換気をすることになりました。
このため、当事者の交代も原則30分以内で行うことになり、通常は、この交代の際に換気を行うことになりました。
このように調停の時間が短縮されることから、当事者の方が調停員等に話したいことについて、事前にまとめる等した方がよいと思います。
さらに従前は、午後10時からの調停と、午後1時30分からの調停が基本で、例外的に午後3時30分からの調停が行われましたが、午後1時30分からの調停開始を午後1時15分からの開始とし、例外的に行われていた午後3時30分からの調停の開始時間を午後3時20分からとするとともに、この時間帯の調停も積極的に行うようになりました。
調停室の中についても、当事者と調停委員等との間に、天井から飛沫防止のためのビニールを設置(コンビニタイプ)したそうで、今後は、より強固なアクリル板の設置に順次変更するとのことです。
さらに、調停の前後に、消毒液(漂白剤を薄めたもの)等で、調停委員が机等を拭くことも行うそうです。
新型コロナウイルスの世界的蔓延、緊急事態宣言等、誰も予想できなかった事態が続きますが、裁判所もとりあえず、上記のように対応しているので、調停の利用についても、注意しながら行いたいと思います。