相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下「相続土地国庫帰属法」といいます。)は、令和3(2021)年4月21日国会で成立した法律で、今年(令和5年)4月24日、施行(しこう:法律の効果が発生すること)されます。
相続土地国庫帰属法は、所有者不明の土地が増加していることから、相続又は遺贈により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度をこの法律により創設し、所有者不明の土地の発生を抑制することを目的としています。
そのため、この制度の利用のできる者は、原則として、相続又は遺贈により土地の所有権等を取得した個人に限られ、売買等により土地の所有権等を取得した個人は含まれません。
土地が数人の共有に属する場合には、国庫帰属の承認の申請(以下「承認申請」といいます。)は、共有者の全員が共同して行うときに限りすることができます。この場合においては、上記の例外として相続等以外の原因により取得した共有者がいても、承認申請をすることができます。
では、どのような場合に、国庫帰属が認められるのでしょうか。
まず、以下のような条件の一つでもあると国庫帰属の承認の申請は却下されてしまいます。
1 建物がある土地
2 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
3 通路その他の他人による使用が予定される土地
4 汚染された土地
5 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
次に、以下のような不承認事由がない場合には、国庫帰属が承認されることになります。
1 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
2 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
3 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
4 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
5 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
承認された場合は、申立人が土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金の納付をすると国庫に帰属することになります。
負担金は、面積に応じず、一律20万円~30万円である場合が多いですが、一部の市街地の宅地、田、畑及び農用地区域等の田、畑については、面積に応じ算定される場合もあります。
この相続土地国家帰属法は、できたばかりの制度であることから、政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされています。
現時点でのこの法律の制度では、土地を国庫に帰属させることはなかなか困難です。
また、国民生活センター等は、この制度が原野商法(原野などの価値の無い土地を騙して売りつける悪徳商法)の勧誘等に使われる危険性を告知しています。
とはいえ、遺産の中に、売却・使用等ができない土地が含まれていることは多く、その処理には、困難が伴います。そのような場合の処分の選択肢の一つとして、今後の改正も含め、検討していく必要があります。