遺産(相続財産)の調査の仕方1-基本事項 では遺産調査の基本事項を記載しましたが、ここでは、遺言書の探し方を記載します。

遺言書の普通の形式には、公証役場で作成される公正証書遺言と自分で作成する自筆証書遺言があります。

公正証書遺言は、遺言書を作成した遺言者が亡くなった後であれば、全国どこの公証役場でも、相続人全員でなくても単独の相続人が必要書類(被相続人と相続人の関係を明らかにする戸籍・除籍や、本人確認証等-詳しい必要書類は日本公証人連合会のWebサイトで確認してください。)を持参すれば、遺言検索システムで、昭和64(1989)年1月1日以後に公正証書で遺言をされた遺言者の氏名、生年月日、遺言公正証書作成年月日等を検索することができます

従前は、公正証書遺言の認証ある謄本(にんしょうあるとうほん:原本に基づいて作成された原本の記載内容全部のコピーで法令上の権限のある者が作成して、謄本である旨認証したものです。
原本と同様の効力を持ちます。)を取得するためには、
その公正証書の原本を保管する公証役場に行って取得しなければなりませんでした。
しかし、平成31(2019)年4月1日からは、遺言公正証書等の原本を保管する公証役場が遠隔地である場合には、最寄りの公証役場で手続きをすることによって、その公正証書の認証ある謄本を郵送で請求することができるようになりました。

これに対し、自筆証書遺言は、自分で作成するため、相続人が、その遺言の存在を知るためには、従前は、遺言者の自宅等で発見するか、遺言を預かっていた人が相続人にその存在を明らかにするしかありませんでした。

しかし、令和2(2020)年7月10日より、法務局での自筆証書遺言の遺言書保管制度が始まりました。
遺言者がこの制度を利用し、法務局に自筆証書遺言を保管した場合は、下記のように、自筆証書遺言を発見することができます。

遺言者があらかじめ、通知される者を指定している場合は、遺言者が亡くなった際に、その人に通知が来ますので、自筆証書遺言が預けられていることがわかります。

この通知が来なかった等の場合の自筆証書遺言の探し方は以下のとおりです。

遺言者がこの制度を利用し、自筆証書遺言の保管を依頼した場合、保管証を受領します。したがって、自筆証書遺言を探す場合には、まず、遺言者の自宅等で、この保管証を探すことになります。

保管証が見つからない場合は、相続人より法務局に「遺言書保管事実証明書」交付請求を行います
これが取得できれば、作成年月日、保管所、保管番号がわかります。
どこの遺言書保管所(遺言書保管所として指定された法務局)でもこの交付請求を行うことができます。必要書類等については、法務省WEBサイトを見てください。

この交付請求で遺言書がないことがわかった場合は、法務局での調査は終わりです。
逆に遺言書があることがわかった場合は、さらに、遺言書情報証明書の交付請求を行うことになります(これもどこの遺言書保管所でも行うことができます。)。
これにより、遺言書の内容がわかります
この請求に必要な書類等についても、法務省WEBサイトを見てください

なお、遺言者情報証明書が交付等された場合は、他の相続人にも郵便等で保管していることの通知がおこなわれます。

公正証書遺言及び法務局に預けられた自筆証書遺言については、裁判所の検認手続は不要です。
しかし、法務局に保管されていなかった自筆証書遺言が発見された場合は、裁判所の検認手続が必要なことは従前と変わりがありませんので、注意が必要です。