令和元(2019)年5月24日、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が成立しました。
そして、戸籍の副本データを管理する法務省のシステムとマイナンバーを連動させた新たなシステムの導入が完了し、行政側が全国の戸籍情報を確認できるようになったことから、令和6(2024)年3月1日に施行されました。
今回施行された事項のうち、相続に関係するものが、いわゆる戸籍謄本(戸籍証明書)、除籍謄本(除籍証明書)の広域交付の制度です。
従前は、戸籍謄本などについては、本籍地の市区町村長に対してしかその交付を請求することができませんでした。そのため、住所地と本籍地が異なる場合、本籍地の市区町村の役所の担当窓口に行き交付請求を行うか、郵便で交付請求をしなければなりませんでした。本籍地が遠方の場合、直接行くには大変ですし、郵便では時間がかかってしまいました。
今回の施行は、上記改正により、法務大臣の使用する電子計算機と市区町村長の使用する電子計算機とを接続する電子情報処理システムを利用して、本籍地でない最寄りの市区町村の役所から戸籍謄本・除籍謄本を取得できるだけではなく、本籍地を複数回移転している場合でも一括して最寄りの市区町村の役所の窓口で、戸籍謄本・除籍謄本を取得できるようになりました。
なお、この制度は、相続関係等を証明する場合以外でも、例えば、自己の現在戸籍を本籍地以外(住所地)で取得しようとする場合などでも利用することができます。
これにより、郵送費や手数料、時間の節約が見込まれます。
ただし、この制度を利用する場合は、以下のような制限があります。
【請求できる者】
①戸籍に記載されている者、②その配偶者、③直系尊属、④直系卑属
※士業であっても、代理して広域交付の手続きをすること及び受領することはできません。
※郵送で利用することはできません。
【請求できる書面】
戸籍謄本(戸籍証明書)及び除籍謄本(除籍証明書)
従前、戸籍・除籍等の取得については、本籍地の市区町村長に対してその交付を請求しなければならなかったため、本籍地と住所地が異なる場合は、本籍地の市区町村で、取得するための交付請求を行うか、郵送で請求を行うなどしなくてはなりませんでした。そのため、相続の手続きのために複数の戸籍謄本等を必要とする場合には、多大な時間を要する等の問題がありました。
そこで、戸籍法120条の2等の改正及びシステムの導入により、広域交付の制度ができました。
しかし、この制度には、①本人が本人確認証等を持参し住所地の市区町村に最低2回行き取得しなければならないこと、②直系の戸籍等しか取得できないこと、③戸籍と除籍しか取得できないこと(戸籍の附票などは取得できない)などの制限があります。
そこで、この広域交付を利用し、相続に必要な相続人全員の戸籍・除籍等を迅速に取得するには、まず、依頼者ご本人にこの制度を使用していただき、被相続人までの直系の戸籍・除籍等を取得していただき、それを、弁護士に渡していただき、兄弟等の戸籍・除籍及び戸籍の附票等を弁護士が取得するということになります。
これにより、従前よりは、迅速に遺産分割紛争手続きを進めることが可能となります。