私は、友人のAと東京の下町の一軒家の土地・建物を共有しています。
私は、売却してお金に代えて二人で分けたいのですが、Aは応じようとしません。
そこで、共有物分割訴訟を考えているのですが、共有物分割訴訟では、私が、売却してお金に換えることを希望した場合、裁判官は、その方法で分割できるかどうかを判断してくれるのでしょうか
共有物分割訴訟での分割方法としては、大きく分けて、①物理的に共有物を分割する現物分割、②共有物を特定の共有者に帰属させ、この共有者から他の共有者に対して価格を賠償させる価格賠償、③共有物を強制的に売却し、その代金を共有者に配分する形式的競売の3つの方法があります。

通常の訴訟の場合、例えば、原告(請求者)が被告(請求を受ける者)に対して、1000万円の請求をした場合、裁判官は、この1000万円の請求が認められるかどうかを判断します。

共有物分割訴訟の場合も、通常の訴訟と同様であれば、例えば、原告が現物分割を請求している場合、裁判官は現物分割が認められるかどうかだけを判断し、認められないと判断すれば、棄却することになります。

しかし、共有物分割訴訟においては、裁判官は、このようには判断しません。現物分割が認められない場合でも、価格賠償、又は形式的競売が認められると判断した場合は、これらの方法で、判決を行います

このように、共有物分割訴訟においては、裁判所は、分割方法について、当事者の主張に拘束されません
裁判所による分割方法が原告の申立と異なることも認められています。
このような共有物分割訴訟の性質を、専門用語では、形式的形成訴訟といいます。

本件の場合で言えば、相談者は、共有物を処分して、金員を取得することを希望していますので、望ましい方法としては、②の価格賠償か③の形式的競売ということになりますが、裁判所は、現物分割が可能と判断すれば、分割方法は現物分割となります。
このような結果となるのは、現物分割が可能な場合は、現物分割を優先して選択しなければならないという法律の規定があることもあります。

とはいえ、他方において、裁判官は、分割方法の選択において、当事者の意思を尊重しますし、裁判官が分割方法の選択を行う判断の基礎は、当事者が提出する主張と証拠です。
このため、共有物分割訴訟を提起する際には、そもそも、現物分割の可能性があるのか、また、どのような分割方法を選択し、その選択をどのように裁判官に納得してもらうかを考え、準備する必要があります。
そこで、このような際には、共有物分割に詳しい弁護士に相談することが望ましいです。