私は、友人のAと東京の下町の一軒家の土地・建物を共有しています。
ただ、お互い年を取ってきたので、この不動産を分割したいと思っています。
このような共有不動産の分割には、どのような方法があるのでしょうか
不動産などの共有物分割の方法としては、大きくいって、①換価分割、②価格賠償、③現物分割という3つの方法があります。①換価分割については、「共有物の分割方法(1) 換価分割とは」で、②現物分割については「共有物の分割方法(2) 価格賠償とは」で、ご説明したので、ここでは、③現物分割について、ご説明します

現物分割とは、共有物を持分の割合に応じて物理的に分割して、各共有者の単独所有とする分割方法です。
もともと、想定されていたのは、本件のように1つの共有物を分割することでした。
しかし、判例は、現物分割と価格賠償を組み合わせ、現物分割により価格に過不足が生じた場合には、共有者間で、対価の支払いにより調整する部分的価格賠償を認めたり、複数の共有物を一括で対象とする分割や、一部の共有者のみに現物分割することも、認めるようになりました。

ただ、共有物分割訴訟で、現物分割を実現させることは、特に東京23区内では非常に難しいのが実情です。

土地上に建物が建築されており、それらが共有物の場合、まず、現状、誰がどのように土地・建物を利用しているか、共有地と隣接地との境界が確定しているか、建物への上下水道、ガス管、電線の位置等、接道義務を満たすか否か(建築基準法第43条、42条)を確認しなければなりません。

その上で、共有者間で、持分に応じた価値になるように分けなければなりません。

そのためには、分筆し、例えば、今ある建物を壊し、新しい2つの建物をたて、両方の建物に上下水道、ガス管、電線を設置し、さらに、接道義務、条例等を満たすようにしなくてはなりません。

業者が古い一軒家の土地・建物を購入し、同じ土地を分筆し、新しい二つの家を建て売却することは良くあるので技術的には可能ですが、現物出資に反対する側は費用負担を断るでしょうから、そのための費用をどう支出するかが、問題になります。
基本的には、協議で行わないと難しいことが多いでしょう。

共有物分割訴訟で可能な場合としては、従前ある建物を利用して、価値の過不足については、価格賠償で行う(部分的価格賠償)ような場合に限られると思います。

どのように共有物を分割するかでお悩みの場合は、弁護士に相談してください。