夫と長男が仕事で海外出張したところ、交通機関の事故で、二人とも亡くなってしまいましたがどちらが先に亡くなったかはわかりません。
夫との子供は長男だけで、長男は結婚して妻がおり、子供(私から見ると孫)も一人います。
夫の遺産は誰と誰で、どのように分けたら良いでしょうか。
相談者の夫の遺産は、妻である相談者が2分の1、孫が長男にかわり、2分の1の割合で相続します。

もし、夫が長男より先に亡くなり、その後、長男が亡くなった場合は、配偶者である妻が2分の1、長男が2分の1を相続します。
そして、長男が亡くなっていますので、長男の相続が発生し、その妻が長男の遺産を2分の1(夫の遺産としては4分の1)、子供が2分の1(夫の遺産としては4分の1)を相続することになります。

長男が夫より、先になくなった場合は、上記の回答と同じように夫の遺産は、妻である相談者が2分の1、孫が長男にかわり、2分の1の割合で相続します。

このような結果となるのは、民法32条の2に「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」と規定し、被相続人と相続人で死亡の先後が不明の場合は、同時に死亡したと推定するとしているからです。

同時に死亡した場合は、その死亡した者のあいだでは相続は発生しないので、このような結果となります。

この規定は、昭和37年7月1日に施行されました。この規定ができる前は、事実上まず遺産を占有して利益を占めた者が勝ってしまうという不都合な結果になっていました。というのは、この者に対して、相続取得を主張する側が死亡の先後を立証する責任を負うことになってしまうからです(そしてその立証はできないからです)。

この規定は、本件のような一つの事故により死亡したことを条件としていません。例えば、父親が日本にいて一定の日時に事故死したことは、はっきりしているが、たまたま、同じ日、外国で長男が登山で死亡したがその時刻がはっきりしない場合などにも適用されます。

また、夫と長男が同時に死亡した者と推定されると、長男は、相続しないことになりますが、孫については、長男に代わって相続することを認めることが妥当でしょう。
そこで、親子間の相続で、相続人である子供が先に死亡した場合は、その子(孫)が相続する制度が適用されます。この制度を代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。

そこで、本設問の場合は、前記のとおり、妻である相談者が2分の1、孫が長男にかわり、2分の1の割合で相続します。