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先日、母が亡くなりました。父は、10年前に亡くなっています。母の相続人は、長女の私と弟、妹の3人です。
母の遺産は、1億円の不動産と1億円ほどの預貯金、有価証券です。
これから、相続の手続を行おうと思いますが、手続の期限等はあるのでしょうか。 -
現在のところ、遺産分割そのものについては、期限がありません。
しかし、相続税の基礎控除を超える遺産がある場合は、相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の確定申告書を税務署に提出し、相続税を納付しなくてはなりません。
現時点(令和3年2月24日)において、
基礎控除=定額3000万円+相続人の数×600万円
です(必要な場合は、税理士、国税庁のHPで「相続税の計算」等をご確認ください)。
ただし、配偶者控除、小規模宅地等の特例などの控除により、基礎控除額に至らない場合は、これらの控除はあくまで、相続税の確定申告をすることが前提ですので、相続財産の評価の問題等に迷った場合も含め、判らない場合は税理士等にご相談ください。相続税の申告が必要な場合は、10ヶ月内に申告し、かつ、相続税を納付しなければ、高率の無申告加算税、延滞税が課税されることになります。
この10ヶ月の期間内に、遺産分割がまとまらない場合は、未分割で申告し、納税した上で、遺産分割が成立した段階で、更正の請求または修正申告することになります。ただし、未分割で申告した場合は、配偶者控除、小規模宅地等の特例などの控除は、適用されません。
このため、納付する相続税額は、控除が適用されない金額となります。
更正の請求等された後、控除が適用され余分に支払われた税額は、還付されることになります。相続税を支払わなければならない場合、相続人各自が自己の相続税額を自己の財産から支払える状態であれば別ですが、相続財産から支払うしかない場合もあります。
相手方の相続人が相続財産を管理等している場合、対峙する相続人は、自己の相続分を交渉するともに、相続財産からの相続税の支払いについても、交渉しなければなりません。
相続に強い弁護士は、相続税の申告というタイムリミットを頭に入れながら、交渉していくことになります。
とはいえ、申告の期限があることは悪いことばかりではありません。
相続は、全員の合意が必要なこと、相続人の生活に必需のお金でないことが多いこと、親しい仲の争いごとであることが多いことから、長期化する傾向があります。
私の経験でも、10数年かかったことがあります。しかし、申告というタイムリミットがある場合は、相続人全員が、税金の支払いを一つの目的とするため、申告期限までに解決しようとする機運が強くなります。
逆に、申告期限を超えてしまったり、遺産が基礎控除内の場合は、こういう歯止めがないため、長期化することになりかねません。相続に強い弁護士は、できるだけ、申告期限内で遺産分割合意が成立するように努めますし、申告がない場合もできるだけ期限をもうけるような形で、解決を進めていくようにします。
なお、相続税の申告以外にも、相続財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、相続税を取得費に参入できる制度等ありますが、期限としての効果を生じることは少ないです。
また、法制審議会(法務大臣の諮問機関)は2021年2月10日、相続や住所・氏名を変更した時に土地の登記を義務付ける法改正案を答申しました。
相続から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料を科す等の内容を含んでいるようです。
所有者に連絡がつかない所有者不明土地が、日本全国の2割程度に達し、土地の有効活用の弊害になっているため、提案されているようですが、順調に成立すれば2023年度から順次施行されるようです。
これらの法律についても、成立した段階、運用が決まってきた段階で、記事にしていきたいと思います。
相続の手続の期限
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