私は、70代の夫と二人暮らしで、成人した二人の息子は既に別に世帯を持っています。
ある程度の財産があることから、夫は、自分が亡くなった場合のことを考えて、遺言を作成したいと考えています。
そこで、私に遺言執行者になってくれと言われています。
ただ、遺言執行者というのが何で、どのようなことをしなくてはならないかが分かりません。教えてください
遺言執行者というのは、遺言が効力を生じた後に、遺言の内容を実現することを職務として、①遺言により指定された者、②遺言により遺言者の指定を委託された者が委託した者、又は③家庭裁判所により選任された者のことです。本件の場合は、①ですので、この場合の遺言執行者を前提にご回答いたします。

平成30年7月6日に成立した相続法の改正により、今まで不明確であった遺言執行者の法的地位・職務内容・権限等が明確化されました。また、それにより、遺言執行者の職務を行うについての新たな注意点も生じました。

もっとも、仮に遺言で遺言執行者に選任されていたとしても、遺言者が亡くなり遺言が効力を生じたときは、従前承諾していたとしても就任を断ることはできます。ただ、本件のように事前に意向を確認された場合は、承諾するかどうか、その段階でも慎重に考えていただくのはもちろんです。

といっても、難しく考えることはありません。遺言執行者は、弁護士、司法書士、税理士等に依頼して、その職務を行うことも可能です(ただし、その費用を相続財産から支出できるよう遺言に定めておくことが望ましいです)。承諾等に迷われる場合は、弁護士に相談してください

遺言が効力を生じ、遺言執行者となることを承諾したときは、直ちに遺言の内容を実現するため任務を行わなければなりません

まずは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知するとともに、相続財産の目録を作成し相続人に交付しなければなりません。その上で、遺言の内容を実現する具体的な任務を執行することになります。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持ちます相続人は、遺言執行者の相続財産の処分その他遺言の執行を妨げることはできません

遺言執行者は、例えば、遺贈の履行を行うことができ、また、特定財産承継遺言(特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言)に基づいてその財産について相続人が対抗要件を具備するために必要な行為を行うことができます。さらに預貯金の払い戻し、解約等の行為を行うこともできます。加えて、遺言に記載されたその他の行為を行うことができます。

他方、遺言執行者は、善良な管理者の注意義務をもって執行業務を行わなければならず、また、相続人に適宜、報告しなければなりません。

遺言執行者の報酬は、遺言に記載がある場合はそれに従いますが、記載がない場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行い、報酬を決めてもらうことができます。

遺言の執行が終了した場合は、遺言執行者は、その旨を相続人に報告しなければなりません。

その他、遺言執行者への就任、職務の遂行に疑問が生じた場合は、弁護士まで、ご相談下さい。